遺産分割協議とは?進め方と協議書の書き方をわかりやすく解説

民法

導入

「親が亡くなった後、遺産をどうやって分ければいいの?」「遺産分割協議って何をすればいいの?」そんな疑問をお持ちではありませんか。

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、合意する手続のことです。遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合には、この遺産分割協議が必要になります。しかし、相続人全員の合意が必要なため、意見が対立すると話し合いが長引き、トラブルに発展することも少なくありません。

この記事では、司法書士を目指して勉強中の私が、遺産分割協議の基本的な仕組みや進め方、協議書の書き方をわかりやすく解説します。相続手続をスムーズに進めるための参考にしていただければ幸いです。

1. 遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、被相続人(亡くなった人)の遺産を「誰が」「何を」「どのように」相続するのかを具体的に決定するための話し合いのことです。

民法では、相続人が複数いる場合、遺産は相続人全員の「共有」となると定められています。しかし、共有のままでは財産の処分や管理が難しいため、遺産分割協議を行って、各相続人が具体的にどの財産を取得するかを決める必要があります。

遺産分割協議が必要になるのは、主に以下のような場合です。

第一に、遺言書がない場合です。遺言書があれば、基本的にその内容に従って遺産を分けることになりますが、遺言書がない場合は、相続人全員で話し合って分割方法を決める必要があります。

第二に、遺言書に記載されていない財産がある場合です。遺言書があっても、すべての財産が記載されているとは限りません。記載されていない財産については、遺産分割協議で分け方を決めます。

第三に、相続人全員が遺言書とは異なる分け方に合意した場合です。遺言書があっても、相続人全員が合意すれば、遺言書とは異なる内容で遺産を分けることができます。

2. 遺産分割協議の期限

遺産分割協議自体には、法律上の明確な期限はありません。相続開始から10年、20年経ってから協議を行っても、法的には問題ありません。

しかし、実務上は相続開始から10ヶ月以内に協議を終えることが強く推奨されます。その理由は、相続税の申告・納付期限が「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と定められているためです。

相続税の申告には、遺産分割協議書の提出が求められます。特に、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」といった節税制度を利用する場合には、遺産分割協議書が不可欠です。これらの特例を適用できないと、相続税が大幅に増えてしまう可能性があります。

また、相続放棄の期限は「自己のために相続が開始されたことを知った時から3ヶ月以内」です。遺産分割協議の過程で借金の存在が判明した場合、相続放棄を検討する必要があるため、できるだけ早く協議を始めることが重要です。

3. 遺産分割協議をしないとどうなる?

遺産分割協議をしなかったり、長期間放置したりすると、以下のようなリスクが生じます。

3-1. 相続財産の処分・名義変更ができない

遺産分割協議が完了しないと、相続財産の処分や名義変更ができません。例えば、故人の銀行口座を解約するには、遺産分割協議書(もしくは遺言書)が必要です。また、不動産の名義変更(相続登記)も、遺産分割協議書がなければ進められません。

2024年4月からは相続登記が義務化されており、相続開始から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。遺産分割協議を放置すると、この期限に間に合わなくなるおそれがあります。

3-2. 相続税で大きな不利益を被る

相続税の申告時には、遺産分割協議書を提出します。特に、「小規模宅地等の特例」や「配偶者控除」といった節税制度を適用する場合には、遺産分割協議書が不可欠です。

これらの特例を適用できないと、相続税が数百万円、場合によっては数千万円も増えてしまうことがあります。10ヶ月の期限内に遺産分割協議を終えることが、節税のためにも非常に重要です。

3-3. 新たな相続人が増えて問題が複雑化する

遺産分割協議を放置している間に、相続人の一人が亡くなると、その人の相続人が新たに加わることになります。例えば、兄弟3人で協議すべきだったのに、一人が亡くなってその子供たちが相続人になると、協議の参加者が増えて話し合いが複雑になります。

時間が経つほど、相続人の数が増え、意見をまとめるのが難しくなります。早めに協議を始めることが、トラブルを避けるための鍵です。

4. 遺産分割協議を円滑に進める6つのステップ

遺産分割協議を成功させるには、適切な手順を踏むことが重要です。以下、具体的なステップを解説します。

ステップ1:遺言書があるか確認する

最初に、被相続人が遺言書を残していないかを確認します。遺言書が存在する場合、原則としてその内容に従って遺産を分けることになり、遺産分割協議は不要になるケースがあります。

遺言書には、主に以下の3種類があります。

遺言書の種類保管場所検認の必要性
自筆証書遺言自宅の金庫や仏壇、貸金庫など / 法務局(保管制度利用時)必要(法務局保管は不要)
公正証書遺言公証役場不要
秘密証書遺言自宅の金庫や仏壇、貸金庫など必要

自宅や心当たりがある場所を探すほか、公証役場の遺言検索システムも利用して、遺言書があるかどうかを調べましょう。

なお、法務局や公証役場以外で保管されていた自筆証書遺言・秘密証書遺言は、見つかってもすぐに開封してはいけません。家庭裁判所が内容を確認する「検認手続」を経なければ、5万円以下の過料が科される可能性があります。

ステップ2:戸籍謄本を収集して相続人を確定させる

被相続人の「出生から死亡まで」の連続した全ての戸籍謄本を取得し、法的に権利をもつ相続人全員を正確に確定させましょう。

法定相続人には相続順位があり、家族・親族なら誰でも権利を得られるわけではありません。具体的には、配偶者は常に相続人ですが、子・親・兄弟姉妹は順位が決まっており、上位の人がいると下位の人は相続人になれません。

•配偶者:常に相続人

•第1順位:子(もしくは代襲相続した孫)

•第2順位:親もしくは祖父母

•第3順位:兄弟姉妹

相続人を確定するには、戸籍謄本の取得が必須です。思い込みで進め、協議後に前婚の子や認知した子などが判明した場合、遺産分割協議は無効となるので注意しましょう。

ステップ3:相続財産を調査して財産目録を作成する

預貯金や不動産といったプラス財産と、借金などのマイナス財産を全てリストアップし、一覧表である「財産目録」を作成します。

財産目録は遺産分割協議の土台となる資料であり、相続税申告の基礎にもなるものです。また、マイナスの財産が多ければ、相続開始後3ヶ月以内に相続放棄を検討する重要な判断材料となります。

不動産は市区町村役場で「名寄せ帳」「固定資産評価証明書」を、預貯金は各金融機関で「残高証明書」を取得して、財産の内容と評価額を確定させましょう。

ステップ4:相続人全員で遺産の分割方法を協議する

財産目録をもとに、相続人全員が参加して遺産の分け方を話し合います。

全員が一堂に会する必要はなく、電話や手紙、メール、Web会議などでの参加も有効です。ただし、一人でも欠けたり、反対したりすると協議は成立しません。

相続人同士で意見が対立するのは珍しくありません。公平かつ円滑に話し合いを進めるためには、弁護士や司法書士などの専門家のサポートを受けるのがおすすめです。

ステップ5:協議内容をもとに遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議にて全員で合意したら、正式な書面として「遺産分割協議書」を作成します。

遺産分割協議書に相続人全員が署名し、実印を押印し、各自の印鑑証明書を添付すると、不動産登記や銀行口座の解約などの相続手続に使用できます。

ステップ6:遺産分割協議書をもとに相続手続を進める

遺産分割協議書が完成したら、以下のような相続手続を進めます。

•不動産の名義変更(相続登記)

•預貯金の解約・名義変更

•株式の名義変更

•相続税の申告・納付

5. 遺産分割の4つの方法

遺産分割には、主に以下の4つの方法があります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて適切な方法を選びましょう。

5-1. 現物分割

現物分割とは、財産をそのままの形で分ける方法です。例えば、「長男が不動産を相続し、次男が預貯金を相続する」といった形です。

最もシンプルで分かりやすい方法ですが、財産の価値が均等でない場合、不公平感が生じることがあります。

5-2. 代償分割

代償分割とは、特定の相続人が財産を取得し、他の相続人に金銭(代償金)を支払う方法です。例えば、「長男が不動産を相続し、次男に代償金1,000万円を支払う」といった形です。

不動産など分けにくい財産がある場合に有効ですが、代償金を支払う資力がない場合は利用できません。

5-3. 換価分割

換価分割とは、財産を売却して現金化し、その代金を分ける方法です。例えば、「不動産を売却し、売却代金を相続人で分ける」といった形です。

公平に分けやすい方法ですが、売却に時間がかかることや、売却費用がかかることがデメリットです。

5-4. 共有分割

共有分割とは、財産を相続人全員の共有とする方法です。例えば、「不動産を長男と次男で2分の1ずつ共有する」といった形です。

一見公平に見えますが、共有財産は処分や管理が難しく、将来的にトラブルの原因になりやすいため、避けるのが望ましいです。

6. 遺産分割協議書の書き方

遺産分割協議書は、相続手続に必要な重要な書類です。以下、具体的な書き方を解説します。

6-1. 遺産分割協議書の必須記載事項

遺産分割協議書には、以下の内容を必ず記載する必要があります。

1.タイトル:「遺産分割協議書」

2.被相続人の情報:氏名、死亡年月日、最後の住所、最後の本籍

3.相続人全員で協議して合意に至った旨

4.誰がどのような財産を相続するか(財産の特定は正確に)

5.作成日付

6.相続人全員の署名・実印の押印

6-2. 遺産分割協議書の書き方の例

以下に、遺産分割協議書の書き方の例を示します。

遺産分割協議書 被相続人 ○○○○(最後の住所:東京都○○区○○町○丁目○番○号、最後の本籍:東京都○○区○○町○丁目、死亡年月日:令和○○年○○月○○日)の遺産について、相続人全員で遺産分割協議を行った結果、次のとおり合意したので、これを証するため本協議書を作成する。 1. 次の不動産は、相続人○○○○が取得する。 所在 東京都○○区○○町○丁目 地番 ○○番○○ 地目 宅地 地積 ○○.○○平方メートル 2. 次の預貯金は、相続人○○○○が取得する。 ○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○ 残高 金○○○○万円 3. 前記1、2に記載した財産以外の一切の財産は、相続人○○○○が取得する。 4. 本協議書に記載のない遺産が後日発見された場合は、相続人○○○○が取得する。 令和○○年○○月○○日 相続人 住所 東京都○○区○○町○丁目○番○号 氏名 ○○○○ 印(実印) 相続人 住所 東京都○○区○○町○丁目○番○号 氏名 ○○○○ 印(実印)

6-3. 遺産分割協議書を書く際の注意点

遺産分割協議書を書く際には、以下の点に注意しましょう。

財産の特定は正確に:不動産であれば登記簿謄本の記載通りに、預貯金であれば金融機関名、支店名、口座番号を正確に記載します。あいまいな表現は避けましょう。

相続人全員が署名・実印を押印:遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、実印を押印する必要があります。実印であることを証明するため、相続人全員の印鑑登録証明書を添付します。

後日発見された遺産の取り扱いを記載:協議後に新たな財産が見つかることもあります。その場合の取り扱いを事前に決めておくと、後々のトラブルを防げます。

7. 遺産分割協議がまとまらない場合

相続人同士で意見が対立し、遺産分割協議がまとまらない場合は、以下の方法で解決を図ります。

7-1. 調停

家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立て、調停委員の仲介のもとで話し合いを行います。調停は、裁判よりも柔軟な解決が可能で、費用も比較的安く済みます。

7-2. 審判

調停でも合意に至らない場合は、家庭裁判所が「遺産分割審判」を行い、裁判官が分割方法を決定します。審判の結果には法的拘束力があり、相続人はその内容に従う必要があります。

まとめ

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、合意する手続のことです。遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合には、この協議が必要になります。

遺産分割協議には法律上の期限はありませんが、相続税の申告期限が10ヶ月以内であるため、それまでに協議を終えることが推奨されます。協議を放置すると、相続財産の処分ができない、相続税で不利益を被る、相続人が増えて問題が複雑化するといったリスクがあります。

遺産分割協議を円滑に進めるには、遺言書の確認、相続人の確定、財産目録の作成、協議、協議書の作成、相続手続という6つのステップを踏むことが重要です。また、遺産分割には現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4つの方法があり、状況に応じて適切な方法を選ぶ必要があります。

遺産分割協議書は、相続手続に必要な重要な書類です。財産の特定を正確に行い、相続人全員が署名・実印を押印することが求められます。

遺産分割協議は、相続人同士の意見が対立しやすく、トラブルに発展することも少なくありません。もし協議がまとまらない場合は、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。この記事が、皆さんの遺産分割協議の参考になれば幸いです。

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